東アジア地域の世界遺産事情

2024-03-09

テレビ番組や旅行雑誌等で「世界遺産」という言葉をよく見かけるなど、近年世界遺産が人気を博しており、観光旅行の主要な目的先としても注目されています。では、その世界遺産は誰がどのようにして決めているのでしょうか。

世界遺産とは

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世界遺産(World Heritage)とは、1972年にユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて作成された世界遺産リストに登録されている、建造物や自然などの人類が共有すべき顕著な普遍的価値を有する不動産のことです。

世界遺産リストへの登録は、まず世界遺産条約締約国が国内暫定リストを作成し、その中からUNESCO世界遺産センターに推薦します(原則として各国1年につき1物件)。

そして専門機関による現地調査が行われて評価報告書が作成され、その報告書に基づいて世界遺産委員会によって世界遺産リストへの登録が決定されます。

このように、世界遺産はユネスコという国際機関の会合によって決定されており、そのため公的なお墨付きの価値のような意味合いも認識されています。また条約ですので、世界遺産への登録申請は個人や企業が直接行うのではなく、条約を締結している各国の関係政府機関がとりまとめて行います。

つまり、世界遺産というものは「国際機関や国家のやりとりによってその登録が決定されている」ということです。

世界遺産の種類

世界遺産は、その登録基準によって以下にある「文化遺産・自然遺産・複合遺産」の3種類に分類されます。

文化遺産
顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など

自然遺産
顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、景観、絶滅のおそれのある動植物の生息・生息地などを含む地域など

複合遺産
文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているもの

1978年の第2回世界遺産委員会で12件が初めて世界遺産リストに登録されて以降、2015年現在、文化遺産802件、自然遺産197件、複合遺産32件の合計1031件が世界遺産リストに登録されています。

東アジア地域の世界遺産事情

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現在、東アジア地域には件の世界遺産があります。各国の2015年現在の世界遺産登録数は以下のようになっています。

日本
文化遺産15件、自然遺産4件の合計19件の世界遺産があります。

中国
文化遺産34件、自然遺産10件、複合遺産4件の合計48件の世界遺産があります。

韓国
文化遺産11件、自然遺産1件の合計12件の世界遺産があります。

北朝鮮
文化遺産のみ2件の世界遺産があります。

モンゴル
文化遺産3件、自然遺産1件の合計4件の世界遺産があります。

台湾
世界遺産に登録されている物件はありません。

上記のように、台湾には現在のところ世界遺産がひとつもありません。これは世界遺産に登録されるほどの価値を持つ文化や自然が台湾にはないというわけでは決してなく、特殊な事情があるからです。

先述したように、世界遺産は条約締約国が登録を申請する仕組みであるため、政治的な事情で世界遺産条約の締約国となることができていない台湾には世界遺産がないというわけです。

また、毎年世界中で新しく世界遺産が誕生していることからもわかるように、すでに世界遺産のある国でも登録されている物件に劣らぬ文化や自然がまだまだ存在していることも事実です。

世界遺産は確かに素晴らしいものばかりですが、それらは国際機関や国家など決定する側の様々な事情ややりとりのうえで決定されているというだけであって、「世界遺産だからすばらしい」というような認識を持つことは避けたいところです。

これから世界遺産観光に行かれる方は、ただ観光対象として見るだけではなく、その物件が世界遺産に登録された意義や経緯についても関心を持って接してみると更に観光で得られる見識や楽しみ方が広がると思います。